「演奏はその人自身の鏡」と聞いたことがあるが、性格と演奏の個性はどのくらい関係がある?

だいぶ前ですが、門下の先輩に「人は喋るように弾くんだよ。君はいつもとっても早口で喋るし、演奏のテンポも速いよね」と言われて、なるほど!と思いました。当時の私は、ゆっくり落ち着いて喋るというよりかは、喋っているうちに色々なことが思いつき、どんどん口調が速くなっていくタイプでした。今は、ゆっくり喋ることもできますし、演奏の方もゆっくりした曲でも気まずくならずに弾けるようになったと思います。

演奏家の友人たちを見ていると、その人が表に出している性格と、実際の演奏の個性はあまり関係無いのかな、とも感じます。私たちが相手と接している時に見える性格や、本人がいわゆる「外面」として出している性格より、本人も気づいていない『無意識の自分』みたいなものの方が、演奏に反映されるのだと私は理解しています。無意識の自分、言ってみれば本性、みたいなものは、演奏で出さないようにすることの方が難しいのでは、と思います。因みに、私はコンクールの審査員長に「悪魔的」な演奏だとコメントを頂いたことがあるのですが、私が人と接している時の性格は決して悪魔的では無いはずです…。ですので、私の演奏から、無意識レベルの私がどういう人間であるのかをその先生には見抜かれたのかな、と感じました。そういう点では、演奏って本当に恐ろしいです。自分をさらけ出す行為なので。