ベートーヴェンのソナタの特徴、らしい演奏をするために何が必要か、どんなところが好きか...

①ベートーヴェンのピアノソナタの特徴の一つに、度々オーケストラ的、又は弦楽四重奏的であるということが挙げられると思います。もしこのソナタをオーケストレーションするなら、ここのメロディーはクラリネットかな...等と考えながら弾いたり、彼の弦楽四重奏の作品を聴いて勉強することが重要だと思います。例えば、私は学生時代に4番の弦カルのピアノ版を友人と授業で弾いたのですが、普段おざなりになりがちないわゆる「伴奏」の部分をいかに音楽的に弾くか、ということに意識がいき、大変勉強になりました。他の楽器の音色に寄せようとすると、自然とアプローチが音楽的になったりもしますしね。

②ベートーヴェンらしい演奏...これは個々人で捉え方が違うのかもしれませんが、まず技術的なことを申しますと、

1.テンポが変わる表示がされていないところで、勝手にテンポを変えてしまう演奏は私はあまり好きではありません。穏やかな第二主題が出てくると急に遅くなる演奏をよく聴きます。実はベートーヴェンのソナタって、良いテンポを見つけるのが結構難しかったりします。テンポは非常に個人的なものなので、絶対値が有る訳ではないのですが、速すぎず遅すぎない、流れが渋滞しない速さを見つけるのがとても大事だと思っています。全体像を見た時に、意外に流れが滞ってしまいがちな音楽だと思います。

2.超初心者向けアドバイスになってしまうのですが、音価や強弱の位置が楽譜通りでない演奏も残念だな、と思います。

3.楽譜は、ベーレンライターが良い研究をしているので、解説などを読んでみると良いかもしれません。学校の図書館にもし無ければ、頼めば取り寄せてくれるかも...日本語訳が無いと思うので、Google翻訳アプリの写真翻訳を使うと、あまり自然な訳にはなりませんが、なんとなーくのレベルで言ってることが判るかもしれません。英語ができるのであれば原文で読むのが勿論一番ですが。

4.ピアノとフォルテで圧倒的な差をつける(これは、私がベートーヴェン・フラデツのコンクールで褒めて頂いたことです) 圧です。自分を取り巻く雰囲気の圧を調整するレベルで差をつけてください。すると、それっぽくなります。笑

音楽的?精神的なアドバイスです:質問者様がどのソナタを弾くのかがわからないのでアバウトなアドバイスになってしまいますが、ベートーヴェンの手紙を読んでみると良いと思います。例えば遺書の後の作品なら、遺書を読むと結構ベートーヴェンという人物への見方が変わります(私の場合ですが。因みに青空文庫でネットで無料で読めます)。

ガチで死にたいほど病んで、そこから這い上がってきた人が書いた音楽なんだ...と気づいた時、私は精神的にインスパイアされました。彼の根底にある強い精神力と、音楽への献身に胸を打たれました。 そして、彼の音楽全てに当てはまるわけでは無いですが、「苦悩を突き抜け歓喜に至れ」という彼の言葉は彼の音楽の精神性も表している象徴的な言葉だと思います。101の3楽章からフーガへ、110の嘆きの歌から曲の最後に向けて...他のソナタにも見られると思います。

ソナタは献呈されている場合が多いので、どなたに献呈されたのか調べてその方との手紙のやりとりや、その時期に書かれた手紙を読んでみるのも良いと思います。今まであまり弾いてこなかったのであれば、まずは人となりを少しでも知って、友達みたいに思えるレベルまで行ければバッチリです。

③ベートーヴェンって、後の時代には神のように扱われているんですよね。でも実際は、怒って女中に卵を投げつけたり、機嫌が悪いのが顔に出て肖像画が不貞腐れていたり、推しのナポレオンに酷く失望したり、コーヒー豆をきっちり数えていたり...と人間味溢れまくっているところが好きです。

フォルテから急にピアノになる彼特有のアレも、メンタルが安定しない人みたいで好きです。

執拗に一度→五度→一度を繰り返しているのも、変態的な狂気を感じるので好きです。

怒りっぽいと見せかけて、101の1楽章はハグして寝かしつけてもらっているみたいで好きです。

告別の3楽章で、ルドルフ大公戻ってきたのが嬉しすぎて、尻尾振って喜ぶ犬みたいになっているのも好きです。

④質問者様の演奏されるソナタの番号を知らないので(知っていたとしても自分が弾いたことのあるやつじゃなければ、多分大したアドバイスができないのですが💦)超アバウトな感じになってしまいました。実技試験で演奏されるのであれば、これも本当に曲によるのですが、意外と緊張すると弾きづらくなる恐ろしいパッセージもあったりするので念入りに練習すると良いかと思います。指動く系の曲だと特に、事前に弾きあいをするとか、友人に聴いてもらうとか、緊張する場を経験しておいて、どこでコケやすいのか確認しておくと良いです。

因みに私は5年くらい告別ソナタを弾いていますが、3度のところは本番で毎回必ず外すので諦めています。笑 どのくらい今までベートーヴェンのソナタを弾かれて来たかもわかりませんが、初期のソナタは初見で弾けたりするので、なんなら1番から全部ザーっと休日にでも弾いてみると、彼の音楽がどんな風に進化していったのかもわかりますし、楽しいかもしれません。 試験、頑張ってくださいね!!!

お茶代投げてくれる人!